但馬牛と松坂牛について。

松阪地方では、農業が機械化されていなかった当時から、役牛(えきぎゅう)としてすぐれた但馬(兵庫県)生まれで、紀州(和歌山県)育ちの雌牛を購入していたといわれています。

役牛とは耕作や運搬に使う牛のことで、3年ほど役牛として肥育しているうちに肉付きが良くなるそうです。

この但馬牛の牛肉は、資質・肉質などが非常に良いため、松坂牛や近江牛の素牛(もとうし)となっています。

素牛とは肥育牛や繁殖牛として飼養される以前の生後6~12か月の子牛のことで、松坂牛は、この但馬牛があって、現在のブランド牛を誕生させることができました。

松坂牛や近江牛に限らず、岩手県の前沢牛、宮城県の仙台牛、岐阜県の飛騨牛、さらに佐賀県の佐賀牛なども、但馬牛の血統を入れることで、地元のブランド牛の品種改良が行われているそうです。

優秀な牛が優秀な牛を生み出していくシステムは、ある意味でいえば人間がつくり出した欲の追求のためのシステムですが、こうした地元生産者の努力があってこそ、世界に冠たる松坂牛が食せるという背景を忘れたくありません。

このように手間隙をかけて育て、世界ブランドともなった松坂牛ですが、一時は定義が曖昧で周知されていなかったため、「ブランド偽装」といったような事件まで起きました。

そこで改めて定義が発表され、『松坂牛とは「黒毛和種」の「未経産(子を産んでいない)雌牛」で、2004年(平成16年)11月1日時点での三重県・中勢地方を中心とした旧22市町村、および、旧松阪肉牛生産者の会会員の元で肥育され、松坂牛個体識別管理システムに登録している牛』というように明言化されました。

同様に、但馬牛にも定義があり、それを満たさない限り、神戸ビーフや但馬牛の呼称で流通する牛肉とは認められていないそうです。